「シリンダー錠ってどんな鍵?回らないんだけど…」
「自宅のはシリンダー錠っぽいんだけど、種類とかいろいろあるのかな?」
「仕組みとか構造を理解すれば、自分で交換できる?」
このようにシリンダー錠について悩んだり、調べたりしていませんか?
回らなくなった鍵の修理や交換をするには、DIYするにしてもプロに外注するにしても、ある程度、シリンダー錠の仕組みや種類について知っておく必要があります。
このページでは、シリンダー錠の構造や種類、回らない原因と開け方、交換方法について分かりやすくご案内しています。
シリンダー錠とは?メリット・デメリットを解説!
シリンダー錠とは、円筒形のシリンダーを持つ錠前(じょうまえ)のことです。
※シリンダー(cylinder)は日本語で「円筒(えんとう)」
仕組みは、鍵穴に鍵を差し込むと、円筒形の内部構造に作用して、錠を開閉するというものです。
シンプルで使い勝手が良く、主な用途は玄関などの施錠・戸締りです。
シリンダー錠の構造ですが、内部では次の2つの筒(つつ)が重なっています。
・内筒(ないとう)
・外筒(がいとう)
画像引用)MIWAカタログ P51
画像の茶色の部分が外筒、半透明のグレーの部分が内筒です。
この後、より詳しい内部構造や施錠・開錠の仕組みをご案内いたしますが、その前にこちらの動画(シリンダー錠の構造の図解付き)をご覧になってみてください。
施錠時は、この2つの筒(外筒・内筒)をピンと呼ばれる金属製の棒とバネ(スプリング)が固定して動かないようになっています。
この固定して動かないようにしているピン(障害物)のことをタンブラーといいます。
鍵を差し込むと内部のピンが動き、2つの筒の切れ目(シアライン)が揃うことで、鍵を回すことができるようになります。
内側にはサムターンという、鍵を使わずに施錠・解錠をするためのつまみがあります。
シリンダーとサムターンの違いは、外にあるのがシリンダー(カギの差し込む箇所)で内にあるのがサムターン(つまみ)と覚えておいてください。
玄関用の錠前にはシリンダーとサムターンが付いていますが、トイレなどの屋内の錠前には内側にサムターンだけが付いるものが多いです。
シリンダー錠のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・安い ・丈夫で壊れにくい ・取り付けが簡単 ・スペアキーを作りやすい | ・防犯性が低い |
シリンダー錠は安価で取り付けが簡単なため、さまざまな場所で使用されています。
一方、ピッキングされやすく防犯性が低いというデメリットがあります。
ピッキングとは「ピック」と「テンション」という道具を鍵穴に挿し込み、シリンダー錠を壊さずに不正に解錠する方法のこと。
テンションでシリンダーに回転力をかけた状態にし、鍵穴にピックを差し込んで上下左右に動かすことで解錠する。
昔から普及していたディスクシリンダー錠(シリンダー錠の一種)はピッキングしやすく、1999年ごろに不正侵入が多発しました。
2000年ごろから防犯性を高めたシリンダー錠が登場し、2003年にピッキング防止法(殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律)ができてからは住宅の玄関など防犯が必要な場所には、防犯性の高い構造のシリンダー錠(ディンプルシリンダー錠)が使われています。
シリンダー錠は5種類ある
シリンダー錠の種類 | 概要 |
---|---|
ディスクシリンダー錠 | 円盤状のディスクタンブラーが使われている。鍵は山形のギザギザ。 |
ピンシリンダー錠 | ピンシリンダー錠はタンブラーがピン状になったもの。鍵は山形のギザギザ。 |
ディンプルシリンダー錠 | ピンシリンダー錠の一種。防犯性を高くするために、ピンの配列を複雑にしたり、ピンの強度を高めたりしている。鍵は表面に丸いくぼみ(ディンプル)が開いている。 |
ロータリーディスクシリンダー錠 | 防犯性を高めたディスクシリンダー錠。鍵を挿入するとロッキングバーと呼ばれる部品がロックの役割を果たしている。 |
マグネットタンブラーシリンダー錠 | 磁力を利用したシリンダー錠。タンブラーと鍵に仕込まれた磁石が反発することで内筒を回転させる。磁力が弱くなると空きにくくなる。 |
シリンダー錠は5種類あります。
「昔ながらのシリンダー錠」は1957年に美和ロックから発売され、戸建てやマンションなどさまざまな場所で使用されましたが、国内での生産は2000年ごろに終了しています。
その後、防犯機能を取り入れたシリンダー錠が開発、導入されるようになったのはご案内した通りです。
現在、主流となっているディンプルシリンダー用の鍵の合鍵作成は、ほとんどのホームセンターでは対応できないほど防犯性が高いです。
ディンプルキーについてはこちらの記事をご覧ください。
シリンダー錠の防犯性能を高めるには?
①ディンプルシリンダーを利用する
②ダブルロックにする
③サムターンカバーを利用する
シリンダー錠のデメリットは防犯性が低いことでしたが、この3つの方法で防犯性を高められます。
ディンプルシリンダーを使うと、ピッキングを防げますし、ドリリングというドリルによる鍵の破壊行為も防げます。
ディンプルシリンダーへの交換は、DIYでもできますが、何かあった時の相談先として鍵交換の専門業者に依頼する人が多いです。
ダブルロックとは、1つの扉に2つのカギが付いているドアのことで、別名1ドア・2ロック(ワンドア・ツーロック)と呼ばれます。
こちらはドア自体の交換が必要になりますので、導入費用は高額です。
サムターンカバーは、サムターン回しという扉の内側にあるサムターンを回して不正侵入する行為を防ぐカバーです。
こちらは2,000円~ですので、利用しやすいです。
このような方法でシリンダー錠の防犯性を高めることができますので、試してみてくださいね。
シリンダー錠が回らない原因と開け方・対処法
シリンダー錠や鍵のトラブルというと、よくあるのは次のような状況です。
「玄関の鍵が全然回らない」
「鍵が引っかかる」
「鍵が途中までしか入らず、回らない」
この原因は次の通りです。
シリンダー錠が回らない原因 | 開け方・対処法 |
---|---|
鍵の汚れ、破損 | 汚れは布やブラシで拭き、欠けている場合は合鍵(純正、複製)を試す |
シリンダー内の汚れやさび | 鍵穴専用の潤滑剤を利用する |
シリンダー内に異物が詰まっている | 異物を取り除く(業者に依頼) |
ストライク(建物側の受け座)がずれている | ネジが緩んでいる場合は位置を調節する |
シリンダーが浮いている | サムターン側のネジを締める |
シリンダー錠の各部品の劣化や破損 | シリンダーや錠を交換する |
原因を明確にするために、まずは、今使っている鍵ではなく、合鍵(メーカー純正がベスト)を鍵穴に差し込んでみてください。
すると次のことが分かります。
・鍵が回る場合は鍵本体の問題(汚れや破損)
・鍵が回らない場合は内部の問題
問題がどこにあるのか目途が付いたら、適切な対処をしてください。
【開け方①】カギのケアをする(カギが回る場合)
シリンダー錠の鍵が回る場合、鍵が汚れているかもしれませんので、布で拭いたり、歯ブラシで鍵のギザギザの部分や溝、穴をケアしてみてください。
爪楊枝を使ってもOKです。
これで開かない場合は合鍵(メーカー純正)を利用し、それでもダメな場合は、鍵の修理・交換業者に連絡をしてください。
【開け方②】鍵穴のケアをする(鍵が回らない場合)
シリンダー錠が回らない場合、まずは、鍵穴に何かが詰まっている可能性を考えて、次のどちらかを試してみてください。
・掃除機で異物を吸い取る
・エアダスターで空気を入れて異物を吹き出す
これで開かない場合は、経年劣化で滑りが悪くなっているかもしれませんので、鍵専用の潤滑剤を利用し、それでもダメな場合は、錠前のケアをしてみてください。
【開け方③】錠前のケアをする(鍵が回らない場合)
シリンダー錠が回らない場合、画像の赤〇や赤の□のあたりに原因があるかもしれません。
ネジが緩んでいる場合はネジを締める、位置がずれている場合は凹凸に合わせて調整をする、といったことをしてみてください。
DIYが苦手な人はにはおすすめではありません。
シリンダー錠が回らない原因が、内部の滑りの悪化やネジのゆるみなどであれば、DIYで調整できる場合があります。
ですが、つまようじや針金を挿し込んだり、力づくで鍵を回そうとすると、錠自体が壊れてしまうことがあります。
鍵専用の潤滑剤を使わず、家にある油や潤滑剤を使うと、詰まってしまったり、内部が壊れてしまったりします。
場合によっては高額な修理費がかかってしまうリスクがありますので、DIY慣れしていない場合は、プロに依頼することをご検討ください。
シリンダー錠を自分(DIY)で交換する方法
シリンダー錠の耐用年数は10年ですので、寿命が来てしまった場合は、交換が必要です。
>>「錠前」をDIYで交換する
>>「シリンダーだけ」をDIYで交換する
それぞれご案内します。
錠前(シリンダー円筒錠)の交換手順
錠前全体のDIYでの交換は、やや複雑で上級者向けですので、基本的にはおすすめではありません。
ですが、ドアノブと錠が一体になった
・シリンダー円筒錠(画像の錠前)
・インテグラル錠
は部品が少なく、比較的初心者でも簡単に交換ができます。
ここではシリンダー円筒錠(画像の錠前)の交換方法をご案内します。
・シリンダー円筒錠の交換手順
交換手順 | カンタン解説 |
---|---|
①内側のドアノブを外す | ノブの付け根部分にある小さな穴にマイナスドライバーを指し込んで外す |
②丸座を外す | 裏金を隠す役割がある丸座の側面にマイナスドライバーを差し込んで外す |
③丸座裏金を外す | 裏金の上下にあるビスをプラスドライバーで外す |
④フロント板を外す | 側面にある金属製の板で、上下にあるビスをドライバーで外す |
⑤新しい錠前を分解しておく | 内側の丸座、丸座裏金、フロント板を分解しておく |
⑥新しい錠前を取り付ける | フロント板→丸座裏金→丸座の順に取り付ける |
上記の説明とこちらの動画を照らし合わせながらチェックして、交換するイメージを付けてみてください。
丸座、丸座裏金、フロント板と順に外していき、取り付けるときはこの逆の順番で付けていきます。
必要な道具はこちらです。
道具 | 費用 |
---|---|
マイナスドライバー | 100円程度~3,000円 |
プラスドライバー | 100円程度~3,000円 |
プライヤー | 100円程度~3,000円 |
キリ | 100円程度~3,000円 |
交換用の錠 | 4,000円~ |
合計 | 4,400円~ |
所要時間は30分~です。
錠前を選ぶ際は、フロント板にメーカー名と型番が刻印されていますので、同じメーカー・型番のものを選ぶようにしてくださいね。
廃盤になっている場合は、万能の円筒錠「ユニバーサル円筒錠」を探してください。
インテグラル錠についてはこちらの記事で詳しくご案内しています。
自分で「シリンダーだけ」を交換する
・シリンダー部分の交換手順
交換手順 | カンタン解説 |
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①メーカー名と型番をチェック | 既存のシリンダー錠のフロント板に刻印されているメーカー名と型番を控えておく |
②交換用のシリンダーを購入する | メーカー・型番に対応したシリンダー錠を購入する |
③フロント板(側面プレート)を取り外す | ラスドライバーでビスを取り外す |
④シリンダーを固定しているピンを外す | フロント板にあるシリンダーを固定しているピンを、マイナスドライバーで外す |
⑤シリンダーを取り外す | シリンダーを引き抜くようにして取り外す |
⑥シリンダーを取り付ける | 内部とシリンダーの設置個所の凹凸をよく見てシリンダーをはめる |
⑦ピンとプレートを取り付ける | シリンダーがズレないようにピンを取り付けた後、フロント板をビス仮止めする |
⑧動きを確認するしてからビス止めする | サムターンと連動して、ボルトが動くかを確認してからビス止めする |
上記の説明とこちらの動画を照らし合わせながらチェックして、交換するイメージを付けてみてください
交換は手順どおり行っていけばさほど難しくありません。
必要な道具はこちらです。
道具 | 費用 |
---|---|
プラスドライバー | 100円程度~3,000円 |
マイナスドライバー | 100円程度~3,000円 |
交換用のシリンダー | 1,000円~6,000円 |
合計 | 1,200円~12,000円 |
所要時間は30分~です。
自分で交換する場合、交換用のシリンダーを選ぶのが最初の難関で、次のような作業が必要です。
①メーカー名と型番をチェック
②フロント板の縦横のサイズ計測
③通販サイトでメーカー名と型番を検索
④出てきた商品で間違いないかを店舗に確認
玄関のフロント板の箇所にあるメーカー名と型番の刻印をチェックし、フロント板の縦横のサイズを計測し、商品ページで刻印とサイズを確認して、間違いないかを確認してください。
シリンダー錠には別名・言い換えなどはありません。
ですので、店舗に質問する際は「シリンダー錠のメーカー名と型番、サイズ」を伝えれば間違いありません。
参考)日本ロック工業会「錠の耐用年数についてのガイドライン」
シリンダーの開錠、シリンダーや錠の交換をプロに依頼する
ここからは次の2つについてご案内していきます。
>>回らないシリンダー錠の開錠を依頼する
>>「シリンダー」や「錠」の交換を依頼する
回らないシリンダー錠をプロに開けてもらう費用と時間
玄関のシリンダー錠が回らない原因別の費用をご案内します。
原因(作業内容) | 費用 |
---|---|
鍵に問題がある(開錠のみ) | 4,000円~ |
シリンダーに問題(シリンダーの交換) | 10,000円~+商品代(3,000円~3万円) |
異物や汚れ詰まり(シリンダー錠の洗浄) | 8,000円~ |
錠前の破損(錠前全体の交換) | 10,000円~+商品代(8,000円~) |
早朝夜間料金 | 1,000~9,000円 |
※金額は、セキュリティの高さ、メーカー、鍵の種類などによって変わります。
所要時間は早ければ5分です。
シリンダーや錠前の修理や交換が必要になれば商品代などがかかります。
また、緊急で早朝や夜間に依頼する場合は、別途料金が必要な場合もあるので注意が必要です。
「シリンダー」や「錠前」の交換をプロに依頼する費用と時間
まずは、シリンダーだけを交換してもらう場合の費用です。
・「シリンダー」の交換費用
項目 | 費用(工賃+商品代) |
---|---|
ピンシリンダー錠 ディスクシリンダー錠 | 10,000~15,000円 |
ディンプルシリンダー錠 | 15,000~30,000円 |
所要時間は10~15分です。
続いて、シリンダー錠を他の錠前に交換してもらう場合の費用です。
・「錠前」の交換費用
項目 | 費用(工賃+商品代) |
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ハンドル錠 | 10,000円~+商品代5,000円~ |
ドアノブ錠 | 10,000円~+商品代3,000円~ |
プッシュプル錠 | 10,000円~+商品代15,000円~ |
装飾錠、アンティーク錠 | 20,000円~+商品代25,000円~ |
引戸錠、引違い戸錠 | 15,000円~+商品代5,000円~ |
電子錠 | 10,000円~+商品代7,000円~ |
所要時間は10分~1時間程度です。
シリンダー交換も錠前全体の交換も、プロに頼む場合は商品代と工賃の両方がかかります。
料金はシリンダーの種類や錠前の種類によって異なります。
一般的に防犯性の高いものほど値段が高くなりますので、十分に検討してみてくださいね。
また、業者によって価格が異なります。
悪質業者に騙されないために!
「シリンダー錠の修理・交換後に高額な請求をされてトラブルになった…」ということが、ごくまれにあります。
そうならないために、次のようなポイントを押えて、良心的なプロを選ぶようにしてください。
・複数業者に見積もりをとる
・ネットで探すときは実績や口コミも参考にする
・アフターフォローもあると安心
少なくとも3社の見積もりを比較して検討することをおすすめします。
不具合があった際のアフターフォローにも対応してくれる業者であれば、より安心ですよ。
シリンダー錠を長持ちさせる方法
シリンダー錠が「回らない」「開かない」といったトラブル、本当に困りますよね。
なんとか解決できた後は、シリンダー錠のメンテナンス方法を知っておいてください。
シリンダー錠の画像をご覧いただくと、内部構造が複雑で精密なことがご理解いただけるかと思います。
衝撃には弱いです。
それを踏まえて、次のようなメンテナンス方法を試してみてください。
①エアダスターで鍵穴をケア(3ヶ月~半年に1回)
②専用の潤滑油で鍵穴をケア(1年に1~2回)
③乾いた布やブラシで鍵本体をケア(3ヶ月~半年に1回)
鍵穴のケアは、エアダスターだとそこまで労力がかからず、気軽にできるので、3ヶ月~半年に1度はシューっとしてみてくださいね。
鍵専用の潤滑油を年1回、大掃除のときに使うこともおすすめです。
鍵本体のケアですが、こちらも3ヶ月~半年に1度、布で拭いた後、ブラシでこすってみてください。
鍵の寿命(耐用年数)は10年程度が目安ですが、このようなケアをすることで、少しでも長持ちしますよ。
シリンダー錠についてのまとめ
・シリンダー錠の仕組みは単純で、用途は施錠
・防犯性の高い種類のディンプルシリンダーが主流
・DIYでの解錠や修理・交換にはリスクがあるのでプロに依頼する
シリンダー錠は「鍵穴に鍵を差し込んで、回すことで解錠する」仕組みで、玄関などの施錠の用途で使われています。
現在は防犯性が高いディンプルシリンダーという種類が主流で、交換する人が増えています。
「回らない」などのトラブルの際、構造を理解していれば修理や交換をDIYすることができますが、無理をすると壊れてしまうリスクがありますので、早い段階でプロに依頼することを検討してみてください。
「錠(じょう)」は扉や金庫などに取り付けて施錠するための器具で、「鍵」は錠を開閉するための器具、「錠前(じょうまえ)」は錠と鍵を合わせた一式のこと。