「ウチの玄関の鍵、サムラッチ錠っていうみたいなんだけど、どんな鍵なの?」
「玄関のサムラッチ錠、自分で修理できる?」
「防犯性の高いサムラッチ錠に交換すると、いくらかかる?」
玄関のサムラッチ錠について、このように考えていませんか?
このページでは、サムラッチ錠の仕組みや防犯性の高め方、DIYでの修理・交換方法、プロに依頼した場合の費用についてご案内しています。
サムラッチ錠とは?仕組みや種類、メリット・デメリットを解説!
サムラッチ錠の修理・交換の前に、まずはサムラッチ錠がどんな錠前なのかをご案内していきます!
サムラッチ錠とは、親指で金属部分を押して開閉するタイプの錠前です。
サムとラッチには次のような意味があります。
・サム(thumb)=親指
・ラッチ(latch)=つかむ
ヨーロッパ風の華やかなデザインのものが多く、昭和の終わりから平成の初期にかけて建設された住宅に採用されていました。
「サムピースハンドル錠」や「アンティーク錠」「アンティック錠」「装飾錠」とも呼ばれています。
サムラッチ錠の構造・仕組み
サムラッチ錠の構造・仕組みですが、通常のハンドル錠との最大の違いは、中世の雰囲気がある装飾とサムラッチハンドルです。
基本的に錠前自体は通常のケースロック錠と同様、次のようなパーツで構成されています。
パーツ名 | 説明 |
---|---|
サムラッチハンドル | 室外と室内側に付ける取手の名称 ※室内側はハンドル式や持ち手式のことも |
錠ケース | 錠前の仕組みとなっているパーツを収めている金属製の箱 |
デットボルト | 鍵の施錠時にフロント板から出てくる閂(かんぬき) |
ラッチボルト | フロント板から出ている先端が△のボルト |
シリンダー | 室外側に付いている鍵を差し込む穴で、室内側のサムターンと対になっている |
サムターン | シリンダーと対になっている室内側の鍵の開閉を操作するつまみ |
取り付けネジ | サムターンやフロント板(鍵プレート)を留めるネジ |
フロント板(鍵プレート) | ドアを開けた側面に付いている、鍵のメーカーや品番が記載されている金属製の板 |
ストライク(鍵受け) | ラッチボルトとデットボルトを受け止める凹凸がある金属製の板 |
こちらが、扉内部にある錠ケースです。
突起している上のパーツがデットボルト、下の△(三角)のパーツがラッチボルトです。
室外側にあるのがシリンダー、室内側にあるつまみがサムターンです。
解錠する仕組みは、サムラッチ錠のシリンダーに鍵を差し込むというもので、この点でも通常の錠と同じです。
仕組み上の違いは、解錠後の動作です。
サムラッチ錠の場合、解錠後、サムラッチハンドルの上にあるパーツを下に押して、扉を引くというツーアクションで玄関ドアを開けます。
画像引用)長沢製作所「古代T-60本締錠」「古代・古代NEOシリーズ用の錠」
サムラッチ錠の種類
サムラッチ錠の種類は3つあります。
①シリンダーとサムラッチハンドルが離れたタイプ
②シリンダーとハンドルが一体化しているタイプ
③2つのシリンダーがあるタイプ
それぞれご案内していきます。
【種類①】シリンダーとサムラッチハンドルが離れたタイプ
ハンドルとレバー部分の「空錠」の上に「本締錠」がついたタイプです。
上の本締錠のシリンダーに鍵を差し込むことで解錠します。
画像引用)長沢製作所「ツーロック」
【種類②】シリンダーとハンドルが一体化しているタイプ
シリンダーとハンドル部分が一体化しているタイプのサムラッチ錠です。
画像引用)長沢製作所「CTS-60錠」
【種類③】2つのシリンダーがあるタイプ
上下にシリンダーが付いているツーロックのサムラッチ錠です。
解錠するには2ヶ所ともに鍵を差し込む必要があります。
画像引用)長沢製作所「セパレート」
サムラッチ錠のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・アンティーク調でおしゃれ ・高級感がある | ・親指で操作する部分が劣化しやすい ・交換は代替品になる ・古いと防犯性が低い |
サムラッチ錠は、アンティーク調でお洒落で高級感があり、そうした装飾を好む方に選ばれます。
デメリットは、経年劣化したり、錆びたりして、親指で押す部分=サムラッチが固く動きにくくなってしまうことです。
「ラムラッチ錠が固い」という場合、交換することになるのですが、昭和の終わりごろに流行したため、現在は廃盤になっているものがほとんどで、交換するとなると代替品になってしまうこともデメリットです。
また防犯性が低く不正侵入のリスクが高いのもデメリットです。
そのため、サムラッチ錠から交換するにあたって、防犯性を考えて、レバーハンドルやプッシュプル錠を候補に挙げる方が多いです。
ですが、現在のサムラッチ錠は次のような仕組みを導入しており、防犯性が高いです。
・フェイルセーフ設計
※フェイルセーフ設計=過度の負荷や経年劣化で錠が故障しても通常の施解錠ができる設計
・ディンプルシリンダーの採用
※ディンプルシリンダー=ピッキングしづらい構造になっているシリンダー
「サムラッチ錠の交換を検討しているが、できればデザイン的にサムラッチ錠がいい」という方は、ディンプルシリンダータイプのサムラッチ錠へ交換することを検討してみてください。
交換すると、今までのギザギザの山がある鍵から、くぼみのあるディンプルキーに変わります。
ディンプルシリンダーについての詳細は、こちらの「ディンプルキーとは?合鍵複製に手間がかかる理由」ご確認いただけます。
サムラッチ錠をDIYで修理する方法
サムラッチ錠の不具合とその原因、修理法を挙げました。
※黄色下線はDIYできる方法です。
サムラッチ錠の不具合 | 原因 | 修理法 |
---|---|---|
親指で操作する部分(=サムラッチ)が固い、反応しない | 錆、経年劣化による金属の摩耗 | 錠の交換 |
サムラッチを押した後、戻らない | 錆、経年劣化による金属の摩耗 | 錠の交換 |
鍵が回りにくい、回っても開かない | ・鍵穴の汚れ、つまり ・錆、経年劣化による金属の摩耗 | ・専用の潤滑剤の使用 ・シリンダーの交換 ・錠の交換 |
最も多い不具合は、親指で操作する部分=サムラッチが「固い」「反応しなくなった」「押したまま戻らなくなった」というものです。
原因は経年劣化や錆です。
錠前の耐用年数は10年程度で、10年以上前のものは廃盤となっていることが多いので、不具合が出た時=取り替え時と判断し、代替の錠前を探して交換することを検討してみてください。
参考)日本ロック工業会「錠の耐用年数についてのガイドライン」
潤滑剤を使う(DIY)
「鍵が回らない」「回りにくい」「回っても開かない」という時は、鍵穴専用の潤滑剤を試してみてください。
こちらの動画の01:05~では、実際に鍵穴に潤滑剤を使用している様子を確認できます。
※サムラッチ錠ではありませんが本質的な内容は同じです
鍵穴専用ではない潤滑剤を使用すると、後々、トラブルになる可能性がありますので、鍵穴専用を購入してください。
シリンダーの交換はDIY難易度が高めですが、この後、手順をご案内していますので、取り組まれたい方はぜひチャレンジしてみてください。
サムラッチ錠の「シリンダー」を交換する手順(DIY)
シリンダーとはこの箇所のことです。
この部品だけを購入して交換することができる場合があります。
手順は次の通りです。
こちらはシリンダー交換の手順がよく分かる動画ですので、チェックしてみてください。
※サムラッチ錠ではありませんが本質的な内容は同じです
使用する道具は次の通りです。
交換用のシリンダー
プラスドライバー
マイナスドライバー
ドアストッパー
金額はシリンダーが1万円~です。
防犯性を高めるなら、ディンプルシリンダータイプの装飾錠か通常のハンドルの錠前への交換を検討してみてください。
最大のポイントは、交換用のシリンダーの購入です。
購入のためには、まず、ドアの各サイズを計測する必要があります。
・ドアの角から玄関錠の中心までの距離(バックセット)
・ドアの側面にあるフロントのサイズ
・ドアの厚み
次に、ドアのフロント板などに刻印されているメーカー名と品番を確認します。
取り扱いメーカーは次の通りです。
・サムラッチ錠の取り扱いメーカー
メーカー名(刻印) | 特徴 |
---|---|
長沢製作所(NAGASAWA、KODAI) | ブランドは「古代(KODAI)」「古代Neo」。取替え用サムラッチ錠がある。 |
GOAL(GOAL) | アンティック錠シリーズ(GB、CT、GT)がある。形が似ているので品番の確認が必要。 |
WEST(WEST) | 様々なハウスメーカーのドア鍵を請け負っていた。現在は、①810、②813/814、③815/816、④817/818の4シリーズがある。 |
美和ロック(MIWA、MIWA THMSP) | 交換用のサムラッチ錠は現在「THMTM-1LS」の1種類のみ。 |
ALPHA(ALPHA) | 平成初期のものは廃盤になっている。現在は防犯性の高い3960FLがある。 |
SHOWA(SHOWA、SHOWA CMS) | CMSシリーズは廃盤になっている。CMSを購入するか他社の互換性のあるサムラッチ錠に交換する。 |
日中製作所(AGE) | AGEは廃盤になっているため、他社のサムラッチ錠への取り替えが必須。 |
川口技研(技研、GIKEN) | 廃盤になっているため、他社のサムラッチ錠への取り替えが必須。「GIKEN」の刻印がある。 |
シリンダーやフロント板、鍵本体に刻印されている文字と型番をチェックすると見分けることができます。
メーカー名と型番で販売店とやり取りをしてみてください。
交換用のシリンダーが無い場合は錠前ごとの交換になることがあります。
参考)自分で「シリンダーだけ」を交換する、鍵・錠前のメーカー59社
サムラッチ錠の「錠前」を交換する手順(DIY)
錠前とはこの箇所のことです。
この部品だけを購入して交換することができる場合がありますが、基本的にはプロに依頼することをおすすめします。
手順は次の通りです。
①ドアの厚みを計測する
②ドアの側面にあるフロント板のサイズを計測する
③ドアノブの高さと幅、ビスの位置を計測する
④室内側のサムラッチの形状を確認する
⑤フロント板のメーカーと品番を確認する
⑥アをストッパーで開けておく
⑦ドアノブのビスをドライバーで外す
⑧ドア側面のフロント板を外す
⑨交換するフロント板を側面にセットする
⑩錠前を外側、室内側共に当てがい、ビスで仮止めする
⑪鍵穴を取り付け、ビスで固定する
⑫錠前を本締めする
⑬動作確認
サムラッチ錠の錠前交換のDIY難易度は、シリンダー交換よりも高いです。
こちらは錠前の交換手順がよく分かる動画ですので、チェックしてみてください。
※サムラッチ錠ではありませんが本質的な内容は同じです
動画を見て「DIYする!」と判断したら、まずはメーカー名と型番の刻印を錠前の販売店に伝えてください。
折り返し「サイズの計測をしてください」といった指示がありますので、それに従って作業を進めるとスムーズです。
サイズが合わないとドアを削るケースがありますが、この場合はDIYではなく、プロに依頼することになります。
「交換用の錠前が無い」「この際、もっと使いやすいのに変えたい」という場合は、レバーハンドルやプッシュプル錠への変更を検討してみてください。
サムラッチ錠の修理をプロへ依頼する場合の費用や注意点
・ハウスメーカー
・鍵の修理、交換業者
住宅を建てたハウスメーカーが信頼できるところなら、まずはそちらへ相談してみてください。
ただ、数十年前に建てた場合は、当時の担当の方がおらず、やり取りがスムーズにいかないかもしれません。
連絡をしてみて「ハウスメーカーは頼りにならない」と判断したら、鍵修理・交換の専門業者に依頼してください。
費用は修理・交換する部品や内容によって異なりま。
・サムラッチ錠の「シリンダー交換」の費用(目安)
内容 | 費用 |
---|---|
シリンダーの交換 | 15,000円~(商品代込み) |
・サムラッチ錠の「ハンドル交換」の費用(目安)
内容 | 費用 |
---|---|
サムラッチハンドルの交換 | 30,000円~(商品代込み) |
プッシュプル錠、レバーハンドルへ交換 | 30,000円~(商品代込み) |
・サムラッチ錠の「錠前交換」の費用(目安)
内容 | 費用 |
---|---|
錠前の交換 | 25,000円~(商品代込み) |
鍵の種類や玄関の状態、業者によって金額設定はさまざまです。
防犯性を考えるなら、「防犯性を高めたいのですが…」と相談してみてくださいね。
防犯性の高いディンプルシリンダーの提案など、あなたの状況に応じた最適な提案をしてくれますよ。
プロに依頼する上での注意点は、後でトラブルにならないように、次のようなポイントを押えることです。
・見積書の内容を理解する
・料金面をチェックする
料金面とは、作業代や出張費は含まれているのか、追加料金は発生しないのかなどです。
暮らしの119番は見積もりが無料で、「作業内容の説明が分かりやすい」「スグに対応してくれた」などと評価が高いですよ。
暮らしの119番のような実績のある業者に依頼すると、コスパよく、気持ちよく交換することができますよ。
サムラッチ錠のまとめ
・サムラッチ錠は装飾をされた錠前
・現在は廃盤になっているものが多い
・DIYの難易度を考えるとプロに依頼すべき
サムラッチ錠は昭和の終わりから平成初期に流行った欧風の高級感あるデザインの錠前で、防犯性が低いです。
現在主流となっている防犯性の高い錠前とは構造が異なるため、修理や交換のDIY難易度は高いです。
このページのDIYの手順をチェックしてみて、難しいと判断したら、すぐにプロへの依頼を検討してください。
①ドアの各サイズを計測する
②ドアの側面に記載されている品番を確認する
③室内側のサムターンのネジをプラスドライバーで外す
④シリンダーを固定しているネジを外す
⑤鍵ケースのネジを外し抜き取り、シリンダーを外す
⑥交換用のシリンダーを室外側にはめ込みピンで固定する
⑦室内側のサムターンを取り付けてピンで固定する
⑧外したネジを全て締め直す
⑨動作確認